シミの原因でもあるメラニンは肌の健康を守る重要な働きをしている
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うさみ
多くの人はシミの原因はメラニン(メラニン色素)であることを理解していると思います。そのため、メラニンは美肌を目指す人たちから嫌われる存在です。しかし、本来のメラニンは人体を有毒なものから守る働きがあるため大切な存在です。それにもかかわらず、メラニンが厄介な存在として認識されているのは誤解されていることや、正しい知識が広まっていないことにあります。
そこで今回は、メラニンの本来の働きや、メラニンがシミにならないようにコントロールする方法などについて解説します。シミの原因であるメラニンは適切な対応をすれば強い味方になってくれる存在です。
メラニンとは
メラニンは人間を始め、様々な動植物などで形成される色素のひとつで、メラニン色素とも呼ばれています。一般的には、メラニンもメラニン色素も同じものを指しています。
メラニンには黒褐色の真性メラニン(ユーメラニン)と、橙赤色の亜メラニン(フェオメラニン)のふたつがあります。アフリカ人や日焼けをした人の肌が黒っぽくなるのはユーメラニンの比率が高いためで、反対に白人種はフェオメラニンの比率が高いため、日焼けしても肌の色が濃くなりにくいという関係性があります。ほとんどの場合、ユーメラニンとフェオメラニンを区別することなく「メラニン」と総称で表現されています。
メラニンはインドール環と呼ばれる重合体(ポリマー)で、たんぱく質を構成するアミノ酸のひとつであるチロシンを原料にして合成されています。メラニン細胞にはチロシナーゼと呼ばれる酵素があり、チロシンがチロシナーゼによって酸化して、ドーパそしてドーパキノンと段階的に変化して最終的にメラニンになります。
この行程のなかでシステインが豊富であればフェオメラニンが合成され、システインが少ないとユーメラニンが合成されます。これにより、肌や髪の毛の色が決まっているのです。シミの予防にシステインのサプリメントなどを補給するのは、こういった理由などによるものです。
ちなみに、日本人はフェオメラニンとユーメラニンの両方を持っているため中間色の黄色っぽい肌色をしています。環境省が紫外線についてまとめた「紫外線環境保健マニュアル2015」では、日本は世界で最も皮膚癌が少ない国のひとつとしています。10万人に3人から5人程度で、オーストラリアやニュージーランドの100分の1程度とされています。これには日本人のユーメラニンの保有率が影響していると考えられています。
このようにメラニンの仕組みや合成成分などは明確に解明されているため、スキンケアやシミ対策に有効な様々な方法が研究、開発されています。
メラニンの役割
メラニンには人体の色素を作り出すこと以外にも、光に対する防御という働きがあります。メラニンの防御機能は紫外線、可視光線、赤外線に対するもので、これらの光線による遺伝子DNAの破壊を防いだり、表皮層の下にある真皮層を守ったりする役割を担っています。
紫外線を受けた肌ではエンドセリン、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)などの情報伝達物質が発生します。これを受けてメラノサイトはメラニンを生成し、紫外線によって生じた細胞を傷つける活性酸素を吸収します。この結果、紫外線を受けても細胞は破壊されずに済んでいるのです。仮に、メラニンが機能しないとすぐに水ぶくれになって、最悪の場合は命を落とすことになります。
メラニンこそ人類発展の鍵
メラニンが人類にとって大きな影響を与え、重要な存在であることを裏付ける研究結果があります。イギリスの細胞生物学の権威であるMel Greaves氏(The Institute of Cancer Research)の研究において、メラニンと人類発展の関係性に触れています。
現在から200万年以上前にアフリカ大陸にいた初期人類は、体毛を失い徐々に紫外線に晒されるようになりました。紫外線を受けた人たちはすぐに命を落としていったと考えられていますが、メラニンの防御機能が進化していき、紫外線から守るために肌が黒くなっていきました。遺伝学的証拠を基にすると、おおよそ120万年前には肌が黒い人類が一般的になったと考えられています。
その後、アフリカ大陸から北へ移動した人類は黒い肌から白い肌へ変化していきました。この背景には、白い肌の方がカルシウムを効率良く吸収するのに有効なビタミンDを合成しやすいことや、黒い肌は凍傷になりやすく命を落とす可能性が高かったことが挙げられます。
これらの人類発展の歴史と肌の色、つまりはメラニンの役割には大きな関係性があるため、メラニンは我々人類にとって非常に大切な存在であると言えるのです。
メラニン生成のメカニズム
肌や細胞を守る重要な役割がある一方で、シミの原因でもあるメラニンですが、生成される過程を理解しておくことでシミ対策や美白化粧品選びにも役立ちます。ここではシミが生成される詳しいメカニズムを解説します。
メラニンはおおまかには以下のような流れで生成されます。
・紫外線や摩擦などによる刺激を受ける
・ケラチノサイト(表皮細胞)で活性酸素が発生
・プラスミン、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、エンドセリンなどの情報伝達物質が発生し、メラノサイトを活性化させる
・メラノサイトでチロシンがチロシナーゼと結合(酸化)してドーパ、ドーパキノン、そしてメラニンに変化
・メラニンがケラチノサイトへ移動(メラニン輸送)
・メラニンが活性酸素や紫外線を吸収、散乱し始める
メラニンの生成過程で鍵を握る細胞がメラノサイトです。メラノサイトは、厚さ0.2ミリ程度の表皮層の一番下にある基底層に存在しています。メラノサイトは真皮層に蓋をするようにして存在しており、真皮層を守りつつ表皮層にメラニンを送る防御システムの中継局のようなイメージです。
メラニンが生成される理由はあくまでも防御反応のためであり、結果的に表皮層に滞留してしまったメラニンがシミになっていることを理解しておきましょう。
メラニンが人体に与える影響
紫外線や刺激に対する防御反応によって生成されるメラニンですが、人間の体で主にメラニンによる影響を受けるのは皮膚と髪の毛とされています。
皮膚のシミ(色素沈着)
紫外線を受けた人体では細胞を守るためにメラニンを生成します。メラノサイトで生成されたメラニンはケラチノサイトと呼ばれる表皮層の細胞に移動しますが、肌の新陳代謝であるターンオーバーによって角質になり体外へ排出される仕組みになっています。
しかしながら、加齢、ストレス、不規則な生活などが理由でターンオーバーが長期化したり、乱れたりすることでメラニンが体内に残り続けてしまうことがあります。その結果、メラニンが色素沈着を起こして茶色や黒色のシミになるのです。
なかでも、紫外線に晒される機会が多い顔や腕、肩、脚などはメラニンが多くなりがちでシミができやすくなります。
白髪
髪の毛が黒いのは髪の毛の1本1本にメラニンが豊富に含まれているためです。反対に、メラニンが含まれていない場合は白髪になります。
頭皮には髪の毛を生成する毛包幹細胞と、髪の毛の色を作り出す色素幹細胞があるバルジ領域と呼ばれる部分があります。この中の色素幹細胞が加齢や紫外線、ストレスなどの影響を受けて枯渇することでメラニンが生成されなくなって、結果的に白髪になるのです。
皮膚異常
メラニン本来の働きが衰えてくると紫外線を受けた箇所が赤みを帯びて皮膚が水ぶくれのような状態になることがあります。また、悪寒や高熱などの症状が出ることもあります。
皮膚癌もメラニンの機能低下が遠因となっているとされ、メラニンが遺伝子DNAや皮膚細胞を守れなくなって、皮膚細胞が異常を起こすことで発症するとされています。
メラニンは細胞を守る役割を果たす一方で、皮膚のシミや白髪、皮膚癌を作り出す原因でもあります。とくに、シミや白髪は老化現象の代表格であるため、多くの人が嫌悪し、悩みを抱える傾向があります。その主な原因こそメラニンであるため、悪者扱いをされているのです。
メラニンを有効に活用するためにすること
シミや白髪の原因でもあるメラニンですが、本来は体を守る機能があるとても重要な存在です。そんなメラニンを有効に活用するためにはどのような点に注意すれば良いのかを解説します。
紫外線対策
最も重要と言える対策が紫外線対策です。紫外線を浴びるとメラニンが分泌されて、滞留してしまうリスクが高まります。とくに30歳以降はメラニンが滞留しやすくなるため、可能な限り紫外線を避けることが肝心です。
紫外線は日差しが弱い曇りの日でも、冬の季節でも常に降り注いでいます。そのため、通年で日焼け止めクリームを活用し、夏場は日傘や長袖、帽子などを使って紫外線を浴びないように心がけましょう。
ターンオーバーの正常化
メラニンの分泌は人体にとって必要不可欠なことです。しかし、メラニンが滞留することは避けなければいけません。そのためには肌のターンオーバーが定期的に行われるように努めましょう。
ターンオーバーの正常化は、規則正しい生活、運動、バランスが取れた栄養摂取を基本とし、捕捉するようにしてビタミンCやトラネキサム酸が含まれた美白化粧品を使うといいでしょう。ターンオーバーの正常化は言い換えれば、メラニンを体外へ排出するということです。
生活習慣を整える
メラニンの働きを理想的な状態にするには、規則正しい生活と栄養摂取が基本です。なかでも睡眠と食事が重要で、1日7時間以上の睡眠を心がけ、午後11時から午前2時頃は熟睡できるようにしましょう。
また、食事を通じてビタミンC、ビタミンE、ビタミンAを積極的に摂取するといいでしょう。ビタミンCとビタミンEには抗酸化作用や還元作用があるため、シミを防ぐと同時に解消する効果もあります。ビタミンAは肌の免疫力を上げる効果があるため、避けて通れない紫外線や刺激に強い肌の基礎を作ります。
このように、メラニンを有効活用するということは、メラニンをうまく循環させることとも言えます。そのためには基本的な生活習慣を作ったうえで、紫外線対策や美白化粧品などを使うのが得策です。
どんなに美白化粧品を使っていても、生活習慣が乱れていたり、睡眠不足、栄養不足が続いているとメラニンは循環せずにシミになってしまいます。生活習慣とスキンケアのふたつの主軸を意識しましょう。
まとめ
シミの原因でもあるメラニンは悪者扱いされがちですが、実は人間にとって非常に重要な役割を果たしています。重要な存在であることを認識したうえで、日頃の生活習慣やスキンケアを通じてうまく付き合う必要があります。そのためにも、メラニンの特性を正しく理解しなければいけません。
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